安静にしすぎが体を弱くする理由

理学療法士の鈴木です。本日は「安静にしすぎが体を弱くする理由」について、臨床的視点で解説します。

「痛いなら安静にしましょう」

これは急性期には重要な原則です。しかし、必要以上の安静が長引くと、かえって回復を遅らせることが臨床でも多く経験されます。

では、なぜ安静にしすぎると体は弱くなるのでしょうか。

① 筋萎縮は想像以上に早く進む

筋は「使わない」だけで急速に萎縮します。

研究では、わずか数日〜1週間の不活動でも筋断面積や筋出力が低下することが報告されています。

特に抗重力筋(脊柱起立筋・大腿四頭筋など)は影響を受けやすく、腰痛や膝痛の再発リスクを高めます。

▶︎臨床ポイント

「痛みが落ち着いてから動く」ではなく、痛みがあっても安全な範囲で負荷を保つことが重要です。

② 組織の“耐久性”が落ちる

筋だけでなく、



  • 靭帯

  • 軟骨



も力学的刺激によって維持されています。

荷重刺激が減ると、コラーゲン配列や骨密度が低下し、少ない負荷でも痛みが出やすい状態になります。

▶︎臨床ポイント

安静後に「ちょっと動いただけで再発する」ケースは、組織耐久性低下が背景にあることが多いです。

③ 疼痛抑制系が働きにくくなる

運動には下行性疼痛抑制系を活性化させる作用があります。

つまり、動くこと自体が鎮痛作用を持つのです。

活動量が低下すると、この内因性鎮痛機構が十分に働かず、痛みに対して過敏になりやすくなります。

▶︎臨床ポイント

慢性疼痛では「運動=負担」ではなく「運動=鎮痛手段」という再教育が重要になります。

④ 運動制御が低下する

安静期間が長いと、

  • 固有感覚入力の低下

  • 協調性の低下

  • 過剰防御収縮

が生じます。

その結果、動作がぎこちなくなり、特定部位へのストレス集中が起こります。

これは腰痛・頸部痛の慢性化でよく見られる現象です。

▶︎臨床ポイント

単純な筋力回復だけでなく、低負荷での運動再学習が必要になります。

⑤ 「動くのが怖い」という学習が起こる

長期安静は心理面にも影響します。

「動くと悪化するのではないか」という恐怖が形成されると、回避行動が固定化します。

このfear-avoidanceは慢性疼痛の強力な予後不良因子とされています。

▶︎臨床ポイント

安静指示を出す場合でも、“いつから・何を再開するか”まで具体的に提示することが重要です。

まとめ

安静にしすぎると、

  • 筋萎縮

  • 組織耐久性低下

  • 疼痛抑制低下

  • 運動制御低下

  • 恐怖回避形成

が連鎖的に起こります。

急性炎症期を除けば、身体は「守りすぎる」と弱くなります。

臨床では「どれだけ休ませるか」ではなく、「どのタイミングでどう戻すか」が重要です。

 

 

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