膝の痛みは膝だけの問題ではない

理学療法士の鈴木です。

今回は「膝の痛みは膝だけの問題ではない」というテーマを、臨床的視点から整理していきます。

外来でよくあるのが、

「レントゲンで軟骨が減っていると言われました」

「膝が変形しているから仕方ないですよね」

というケースです。

もちろん関節内の構造変化は重要です。

しかし実際の臨床では、疼痛発生部位と力学的負荷の発生源が一致していないことが多いのが特徴です。

① 膝は“力を受ける関節”

膝関節は解剖学的にみると、

  • 上位:股関節(球関節)

  • 下位:足関節・距骨下関節

の間に位置する中間関節です。

つまり、

👉 膝は「動きを作る関節」ではなく

👉 「上と下の影響を受けてストレスが集中する関節」

と捉える方が臨床的には理解しやすいです。

② 股関節機能低下と膝ストレス

特に重要なのが股関節外転・外旋機能です。

股関節外転筋(中殿筋など)が十分に機能しない場合、

  • 立脚期に骨盤が対側へ落ちる

  • 大腿骨が内転・内旋する

  • 結果として膝が相対的に外反位となる

このアライメントは

動的膝外反と呼ばれ、

  • ACL損傷

  • 膝蓋大腿関節痛

  • 変形性膝関節症

との関連が報告されています。

つまり、

股関節制御低下

→ 大腿骨内旋増加

→ 膝関節面のストレス偏位

→ 疼痛発生

という流れです。

③ 足部機能と脛骨回旋

足部の過回内が生じると、

  • 距骨内側偏位

  • 脛骨内旋

  • 膝関節内旋ストレス増大

が起こります。

ここで重要なのは、

膝は回旋ストレスに対して構造的に強くないという点です。

回旋ストレスが増大すると、

  • 半月板負荷増大

  • 膝蓋骨トラッキング異常

  • 内側コンパートメント圧上昇

などが生じやすくなります。

④ 変形性膝関節症でも同様

変形性膝関節症では、

  • 内反アライメント

  • 膝内転モーメント増大

が問題になります。

しかし近年では、

  • 股関節外転筋力低下

  • 体幹側屈制御不良

が膝内転モーメントを増大させることが示されています。

つまり、

膝の変形だけが問題なのではなく、荷重制御の破綻が本質である可能性がある

ということです。

⑤ 臨床での評価視点(理学療法士的ポイント)

膝痛患者を診るとき、私はまず膝以外を見ます。

✔ 片脚立位での骨盤制御

✔ 片脚スクワットでの大腿骨内旋

✔ 足部アーチの潰れ

✔ 歩行時の体幹側方動揺

✔ 股関節伸展可動域

膝関節の腫脹や圧痛だけでなく、

力の流れ(kinetic chain)を評価することが重要です。

⑥ なぜ局所治療だけでは再発するのか

膝だけにアプローチすると、

  • 一時的に筋緊張は下がる

  • 痛みも軽減する

しかし、

股関節・足部の問題が残存していれば

再び同じストレスが膝へ集中します。

そのため、

 局所炎症コントロール  +  近位・遠位関節の再教育

が必要になります。

まとめ

膝の痛みは、

✔ 股関節機能の影響を強く受ける

✔ 足部アライメントの影響を受ける

✔ 体幹制御とも関連する

✔ 運動連鎖の破綻の結果として出現することが多い

膝は「被害者」であることが少なくありません。

痛みのある部位だけでなく、

力学的ストレスの発生源を探る視点が理学療法士には求められます。

 

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