野球肘・テニス肘はなぜ起こるのか
理学療法士の鈴木です。
今回は「野球肘・テニス肘はなぜ起こるのか」について、文献をもとに解説していきます。
肘の痛みはスポーツ現場で非常に多く、
「使いすぎですね」と一言で片付けられることもあります。
しかし実際には、
年齢・力学的ストレスの種類・組織の耐久性が密接に関係しています。
野球肘とは何か?
野球肘
野球肘は特定の病名ではなく、
投球動作に伴って生じる肘障害の総称です。
特に問題となるのは、
- 内側:内側側副靭帯(UCL)への牽引ストレス
- 外側:上腕骨小頭への圧縮ストレス
- 後方:肘頭への衝突(インピンジメント)
投球動作後期では、
肘内側に強い外反ストレスが加わります。
Fleisigらの研究では、
投球時の肘内側には靭帯耐久性限界に近い外反トルクが繰り返し生じることが報告されています。
なぜ成長期に多いのか?
成長期では、
- 靭帯より骨端線が弱い
- 繰り返し牽引により内側上顆骨端炎が発生
- 圧縮により上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)
が生じやすくなります。
つまり、
組織の成熟度と力学的負荷のミスマッチ
が発症の本質です。
テニス肘とは何か?
テニス肘
正式名称は上腕骨外側上顆炎。
しかし実際の病態は「炎症」よりも
腱の変性が主体とされています。
Nirschlらの報告では、
- 繰り返しの手関節背屈
- 前腕回外動作
- 把持動作
により、短橈側手根伸筋(ECRB)腱に微小損傷が蓄積し、
血管増生・コラーゲン配列異常が生じるとされています。
なぜ“炎症”ではなく“変性”なのか?
組織学的研究では、
- 炎症細胞浸潤は少ない
- 線維芽細胞増殖
- コラーゲン乱れ
- 血管新生
が確認されています。
そのため現在では
「腱障害」という概念で捉えられています。
野球肘とテニス肘の共通点
一見まったく異なる疾患に見えますが、共通点があります。
① 繰り返しストレス
単発の外傷ではなく、微小損傷の蓄積。
② 組織耐久性を超えた負荷
負荷量 × 回数 × 回復不足。
③ 運動連鎖の破綻
肩・体幹・股関節機能低下が
肘への代償ストレスを増大させます。
投球では
「下半身 → 体幹 → 肩 → 肘 → 手」
という力の伝達が必要ですが、
どこかが機能不全を起こすと、
肘が過剰に働くことになります。
臨床的に重要な視点
痛みのある部位だけを見るのではなく、
✔ 肩関節外旋可動域
✔ 体幹回旋可動域
✔ 股関節伸展可動域
✔ 前腕筋持久力
✔ フォーム分析
などを総合的に評価する必要があります。
まとめ
野球肘・テニス肘は
✔ 単なる「使いすぎ」ではない
✔ 力学的ストレスの方向が異なる
✔ 成長期では骨端線が弱点になる
✔ 成人では腱変性が主体
✔ 運動連鎖の破綻が背景にある
という特徴があります。
根本改善には
局所治療+全身の運動制御改善が重要です。
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